2026年_Vol.1
特集:目立つ人口減や空き家…広島の不動産市場の未来はどうなる?/県宅建協会が座談会
公益社団法人 広島県宅地建物取引業協会は、Web会報誌第1号創刊を記念して、「広島の不動産業界」と「宅建協会が担う役割」をテーマに座談会を開催しました。宅建協会会長、副会長、専務理事の三役(2026年2月時点)が揃い、小島情報政策委員長によるインタビューで不動産市場の動向や広島市街地の再開発、さらには空き家問題など、幅広い課題について意見を交わしました。
(2026年2月17日(火) 於:広島県宅地建物取引業協会)

左から村石副会長、綾部副会長、岡本会長、谷峰副会長、少前専務理事、小島情報政策委員長
目次
「ハトマークビジョン」の推進に尽力!業界全体でDX化も
►最初に岡本会長の方から、協会の役割や会員のサポート、DX化への対応などについてお話しいただけますか?
岡本会長:まずは、信頼と安心の証である「ハトマーク」。会員一人ひとりが地域の信頼のブランドとして認知されるよう、協会として務めてまいります。また、今後に向けて業務円滑化支援、魅力ある宅建業界になるための人材育成、選ばれるためのPR、ハトマーク(宅建業界)の浸透などを目指しています。そのためにも、各会員の皆様にも学び直しをお願いしたいと思います。

また、DX化(※注1)についても推奨しております。宅建協会会員限定の支援サイト「ハトサポ」(※注2)も積極的に利用してください。契約書や重要事項説明書などの書式は、法律や条例が改正されるごとに内容がコロコロ変わります。ハトサポの書式は全て反映されていて記載ミスが防げるので、便利な「かんたんWeb書式作成ツール」を使って欲しいですね。ハトサポには研修の動画もあるので、勉強したい方はぜひ活用してください。
全宅連としても、AIやデジタルを怖がらず使いこなす宅建業者を増やして、不動産業界のAI時代をリードしていきたいと思いますので、会員の皆さんのご協力をお願いします。
さらに今、国交省においてもリスキリング(※注3)を推奨しています。法律もどんどん変わっていくので、各会員しっかり勉強をしていただくようお願いしたいですね。
綾部副会長:宅建協会の会員さんでも、会員バッジが持つ意味を知らない方がたくさんいらっしゃるので、信頼と安心の証ということを改めて認識してもらいたいですね。
►ハトマークは、テレビCMで流していてもなかなか浸透していないという意見も。一般の方に向けてはいかがでしょう?
村石副会長:宅建士については、不動産業者の従業員5人に一人以上が必要です。一見、易しい試験と思われがちですが、実際は申込者数に対して合格率13.6%の難しい試験となっています。
そうした中で、全国約13万の宅建業者のうち約10万社以上が宅建協会の会員で、広島県においては約3,000社中2,500社ほどが当協会員です。会員は研修会などにおいて、日々研鑽を積んでいます。安心安全の取引のためにも、ぜひハトマークの業者に依頼していただきたいと思っております。
地価は地域差が顕著!一方で住宅設備など建築費は高騰続く
►地価の動向についてはどうでしょう。令和7年度地価公示によると、広島市の住宅地変動率は+2.4%、商業地も+4.6%となっていますが、呉市、尾道市のほか郡部や島しょ部は軒並みマイナスの変動率です。
村石副会長:呉の現状は、日に日に人口が減り、それに伴って地価も低下しているのは確かです。中心部はほぼ横ばいですが、周辺に関しては厳しい状況にあることは否めません。
中心部には人が集まっても、周辺部は人がどんどん減って住宅が余ってきます。東京も軒並み地価が上がっているように見えても、人が増えている中心は地価が上がっていますが、ちょっと離れたら、地方と同じく下がっています。
そのあたりを理解していただければ…。ちなみに、呉の空き家率は22%を超えていますから、中核都市としてはダントツの1位です。

►ここまでは令和7年度がベースの話ですが、令和8年度はどのような状況になるとお考えですか?
村石副会長:もっと下がりそうですね。
谷峰副会長:広島市中心部以外では、廿日市が現在、新機能都市開発事業として展開している平良丘陵開発土地区画整理事業区域、さらに未来物流産業団地の計画もあります。それによって人の流れが変わってくるだろうという感じもあります。地価においても、若干ではあるけど上昇してくるのかな、と考えています。
►一方、建築費は高騰が続いていますね。このあたりは、どうでしょう?
少前専務理事:建築費の前に、地価についてお話しすると、土地の価格は地域差がありますね。私が扱っている安芸郡海田町付近は、インフラ整備がかなり進んだことで地価が約1.5倍に上がっています。一方、土地の流通については、商業系の関係工場の閉鎖による影響や少子高齢化もあって、中心部に人が増えて周辺が減るという現象が起こっているんです。地域によってかなりの格差がある、というのはこの度の変動率を見ても分かると思います。
そして、建築コストについてですが、三大都市圏であろうと広島であろうと、全国一律で値上がりしているのが住宅設備です。その他の材料費もどこの地域でも上がっているんですけど、やはり流通の問題があるので、広島まで運ぶ経費が上がっていることによる高騰も考えられます。

その他の要因は、国の施策にもなっている認定低炭素住宅(※注4)など。これについてはもう世界的なレベルの話になるので、やむを得ないですね。
それと物価の上昇。もの自体の価格が上がっているという積み重ねが、建築コストの上昇につながっています。しかしながら、それに伴う個人の所得の上昇が追いつかないのが現状です。
賃貸住宅も、昔は個人で鉄筋コンクリートの物件をよく建てていましたが、今はほとんどいなくなりました。目に見えて、収支が合わないことが分かるからです。だから古い物件が増えていて、築35年くらいは当たり前、築50年も…。ただ、設備系はどうしても壊れるのでリフォームが必要で、家主さんもかなり苦労されているのが現状です。
活発な広島市中心部の再開発…
街全体への相乗効果期待
►広島市中心部では再開発事業が活発です。この点についてはどうお考えでしょう。
綾部副会長:以前はサッカーが特に好きという訳ではなく、ルールも分からないし、広域公園で試合があった頃は利便性も悪いので観に行ったことがなかったんです。でも2024年、街中にエディオンピースウイング広島が完成したということで、何回も試合観戦に行きました。行ってみると面白いですね。利便性が良く、若い人やファミリーの利用が増えて中心部が活気づいたように思います。
また、立町エリアには官民連携のリーディングプロジェクトによる「KAMIHACHI X(カミハチクロス)」も建設中です。31階建てで、商工会議所やオフィス、レストラン、イベントホール、ラグジュアリーホテル「アンダーズ」が入る予定です。立町は、紙屋町と八丁堀の中間部分にある通り道で、これまで人があまり集まらなかったんですよね。でも「KAMIHACHI X」が開業すると、この地区が潤うんじゃないかと思っています。
私がメインで仕事をしている段原地区も、長年に渡る再開発できれいになりました。さらにボールパークができ、昨年広島駅も生まれ変わりました。3月には、福屋からペデストリアンデッキも開通するので本当に便利になります。一昔前を思うと、広島市は本当に夢みたいな街になりましたね。

空き家は解体も視野に!利活用するにはさまざまな課題も
►都心部の活性化も大切ですが、広島県は空き家(※注5)が大きな課題となっています。空き家の利活用はどう進めたら良いのでしょうか。
谷峰副会長:まず、空き家の利活用には、売却・賃貸・解体の3つの形があります。利活用と言うと、どうしても今あるものを何とか…という話になるんですけど、解体も一つの手だということを踏まえ、考える必要があるだろうと思っています。
具体的な活用方法については、もちろん、所有者の方のご意向や建物の状態によって大きく異なるのが前提ですが、まず使える空き家というのは、早期活用のため、移住や活用ニーズの掘り起こしなど、情報発信が大切になります。

私は、自治体が運営する空き家対策協議会のメンバーとしても活動していますが、協議会の一員として、また宅建協会の一員として、各市町や自治会との連携を密にして、歴史的地域や自然を考え、空き家を地域資源として再生し、移住促進や観光振興、地域経済の活性化につなげる役割を果たしていかなければと思っています。
令和6年に国土交通省が「不動産業者による空き家対策推進プログラム」(※注6)を作成し、当協会も(公社)全国宅地建物取引業協会連合会と連携して「空き家相談研修」の受講を促進するなど、空き家問題対策の体制強化に取り組んでいるところです。協会のホームページに「ひろしま空き家の窓口」を設けて、毎月無料相談を実施したり、県内各市町の「空き家バンク」や「空き家の関係補助事業一覧」、「関連補助金」について紹介しています。
村石副会長:一般論としての話だけど、家がなぜ空き家になるかというと、住宅として使えないところがいっぱいあって、そこが今からの問題なんです。解体するとして、その後どうするかといったら使い道がない訳です。人口が減ってきて、先日も高校の統廃合の話があったように、子どもが少なくなっているんだから。子どもが少なくなったら、家も要らなくなるということです。これはもう民間レベルでできる話ではなく、社会問題として考えていかなければならない課題です。
少前専務理事:空き家を減らすためには、新築着工数を抑制することで空き家の再利用を推進することになると思いますが、日本の経済にもかなりの影響が出ると思います。現状ではどうしても空いたものを何とかするということを、我々がこれからも考えないといけないと思っています。
岡本会長:空いた家でも中をいじれば、建築確認が必要。これが一番ネックなんです。
村石副会長:その通り。呉なんて道がない所がいっぱいだから。建て替えは、不可能にほぼ近い。もしやろうと思ったら何百万円もかかる。普通の家の解体よりもお金はかかるのに、リセールバリューが全くない訳だからどうしようもないんです。
昔に道路を作って上のほうに建てた家など、壊すにもすごいお金がかかる。都市計画自体をやり直すことも考えなければいけない時代になっているのかな、と思います。

少前専務理事:今はもう売ってもダメ。売れない、住めない。どうしようかという現実と、多少売れそうなところで空き家があった場合でも、周りが全部空き家なんです。売る場合に、当然境界確認をするんですけど、周囲の空き家の所有者を特定するのが非常に難しい。かなり労力をかけて聞き取りなどもしますが、そもそも話を聞ける人がいないんです。結局どうにもならない感じの物件や、なんとかなりそうでもなかなか一歩進めないケースもあります。
村石副会長:これはもう、日本全国どこでも同じ問題を抱えていますね。
少前専務理事:「相続土地国庫帰属制度」という制度も創設されましたよね。その制度を使って国に引き取ってもらえば良いのですが、なかなか条件が厳しくて難しいですし。
村石副会長:家を解体して測量して、となると大きい費用もかかるし、さらにプラスで経費がかかるから結局どうにもならない、というのが現状ではありますね。

少前専務理事:島しょ部は、昔すごく地価が高かったじゃないですか。今はどうですか?
村石副会長:今は全くそんなことはありませんね。
少前専務理事:平地が少ないんで、江田島とかは、すごく高かったですよね。
村石副会長:倉橋などは、坪単価100万円くらいで取引きしているところもありました。大長みかんの豊島も。
あの辺りの家も、すごく良かったのに…。島外に出て戻って来られず住民がどんどん減っています。移住の方や、民泊を営業している方もいらっしゃいますが、ほんの少々です。
岡本会長:住んでいた方は、年を取ったら病院が遠くて不便になって、呉市内にマンションを購入して、元の家が空き家になるんですよね。
村石副会長:昔はフェリーで島の家に戻って掃除をした後泊まっていたけど、今は橋があるのですぐに帰ってしまうんです。蒲刈も少子高齢化が進んで、人口が減少しています。観光客は来ても、島民自体は減っていますね。
谷峰副会長:中山間地域や島しょ地域については、行政や交通網など、色々な関係機関と連携を強化する必要性も感じますね。

►最後に、協会員と一般の方に向けて一言ずつお願いします。
岡本会長:最初にも言いましたが、信頼と安心の証「ハトマーク」。会員一人ひとりが地域の信頼ブランドとして認知されるよう努力しますので、皆さまよろしくお願いします。
綾部副会長:広島市もホテル、オフィスビルと、これからどんどん新しい街になり、人口が増えると思います。ますます発展する街を支える存在として、不動産業界を盛り上げていきたいです。
谷峰副会長:ハトのマークの宅建協会は不動産を扱っていますから、建物に寄り添う、住んでいる地域の人に寄り添う、地域密着型の協会を目指しています。キャッチフレーズでもある「人と住まいを、笑顔でつなぐ。」を前面に出して、一般消費者と安心・安全な取引をこれからも行っていきたいと思っております。
村石副会長:一般の方にとって不動産屋は、テレビドラマの影響なのか多分「怖い」というイメージがあると思うんです。そういうイメージを払拭したいですね。宅建の試験というのは、宅建業法(※注7)はもちろん民法や税法等までも網羅されています。それらをきちんと勉強して、人様の財産を扱う仕事をしています。そのことに誇りを持って、これからも信頼される仕事をしていきたいです。
少前専務理事:私は基本的にまず、自分からという理念があります。自分を見ていただいて、自分のような不動産屋になっていただきたいと思っています。コンプライアンスなどまずは自分に厳しく、そしてそれを会員の皆さんに見ていただく、そのために今専務をしております。商売も協会のこともきちんとできている姿を見て、皆さんが志を持っていただけるようになれば一番良いかな、と感じております。
今回の座談会では、不動産業界もDX化を進めるとともに、協会主導で各協会員のリスキリングを行い、一人ひとりが専門性や倫理観をより高めて、信頼に応えていくことの必要性が再認識されました。
協会員の皆様におかれましては、引き続きご協力のほどよろしくお願いいたします。
注1:DX(デジタルトランスフォーメーション)化 AIなどのデジタル技術を活用してビジネスを変革すること。
注2:ハトサポ 宅建協会会員の業務を支援するサイト。
注3:リスキリング 新しい環境に適応するために必要なスキルを習得すること。
注4:認定低炭素住宅 二酸化炭素の排出量が少なく省エネ効果が高いことが認められた、市街化区域等内にある住宅のこと。
注5:広島県の空き家 令和5年の調査では、広島県の空き家数は231,400戸、空き家率は15.8%となっている。
注6:不動産業者による空き家対策推進プログラム 令和6年に国土交通省が策定したプログラム。所有者への相談体制の強化や不動産業における空き家対策の担い手育成、地方公共団体との連携、官民一体となった情報発信の強化等が盛り込まれている。
注7:宅建業法(宅地建物取引業法) 宅地建物の購入者の利益の保護と、流通の円滑化を図ることを目的に制定された法律。宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、業務の適正な運営と宅地および建物の公正な取引を確保し、宅地建物取引業の健全な発達を促進する。
――座談会出席者――
| (公社)広島県宅地建物取引業協会 会長 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会 常務理事 (公社)全国宅地建物取引業保証協会 業務執行理事 2団体(全宅連・全宅保証)人材育成委員長 岡本 洋三(オカモト ヨウソウ) | 業界経験:50年 事業の主軸:売買・賃貸仲介・ビル管理 主な活動エリア:広島市中心部 |
| (公社)広島県宅地建物取引業協会 副会長 綾部 博臣(アヤベ ヒロオミ) | 業界経験:50年 事業の主軸:売買・賃貸仲介・ビル管理 主な活動エリア:広島駅~段原周辺 |
| (公社)広島県宅地建物取引業協会 副会長 谷峰 隆宏(タニミネ タカヒロ) | 業界経験:30年 事業の主軸:売買・賃貸仲介・賃貸管理 主な活動エリア:廿日市市 |
| (公社)広島県宅地建物取引業協会 副会長 村石 雅昭(ムライシ マサアキ) | 業界経験:47年 事業の主軸:売買・賃貸仲介 主な活動エリア:呉市 |
| (公社)広島県宅地建物取引業協会 専務理事 少前 幸充(ショウゼン ユキミツ) | 業界経験:30年 事業の主軸:売買・賃貸仲介・賃貸管理 主な活動エリア:安芸郡 |
司会進行:小島 弘延 (公社)広島県宅地建物取引業協会 情報政策委員長